よくわかる消火器の正しい使い方|点検の義務や点検方法についても解説

消防用設備

みなさんの一番身近にある消防用設備、消火器。意識してみると、街中で1日1個は消火器を見かけると思います。

しかし、実際に使ったことがある人は少ないですよね。

本記事では消火器の種類や使い方を紹介しながら、いざというときに消火器が正常に作動するためにどのような管理が行われているのかについて解説します。

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消火器とは

消火器

消火器は読んで字のごとく、火を消す機器です。

消火器は初期消火によって火災の被害を最小限に抑える、代表的な消防用設備です。消火器は人の手によって容器内の消火薬剤を噴射し、炎の広がりを押さえます。

消火器には加圧式と蓄圧式のものがあります。

加圧式消火器は、消火器内部に加圧用のガスボンベが入っており、消火器使用時にそのボンベに穴をあけて、消火器内にガスを充満させることで消火薬剤を噴射させます。

蓄圧式消火器は、消火器の容器内にすでにガスを充てんしており、使用時には充てんされている圧縮ガスの力で消火薬剤を噴射させます。

ガスと聞くとなんとなく敬遠してしまう人もいますよね。しかし、消火器の使用方法はとても簡単!一度知っておくことで、火災に備えましょう。

消火器の持ち方

消火器は持ち方を間違えると誤作動を起こしかねないので、正しい持ち方で使用することが必須。

消火器の持ち方
左:正しい持ち方 右:誤った持ち方

上の画像は左側が正しい持ち方で、右側が誤った持ち方です。

右のように安全栓(黄色い輪っか)に手をかけると、持ち上げた際に安全栓が抜ける恐れがあります。安全栓は消火薬剤が誤って噴射されるのを防ぐ役割を果たしており、これが抜けると誤作動を招く原因になるので注意しましょう。

正しくは左のようにレバーの根元に手を回してしっかり持つこと。この持ち方をすれば安定して持ち上げられます。

消火器の使い方

消火器を実際に使ったことがある人はかなり少ないですよね。もう一度申し上げますが、消火器の使い方は簡単です。これさえ知っていれば、火災にあったときに冷静に動くことができ、火災の被害を最小限に抑えられるかもしれません。

消火器の使い方

①安全栓を垂直に引き抜く

②ホースを外し、火元に向ける

③レバーを強く握って噴射する

消火器の使用期限

消火器の表示
消火器の側面表記 引用:だれでもわかる消防用設備

消火器の使用期限は、消火器側面に「設計標準使用期限」と表示されています。業務用消火器はおおむね10年、一般家庭用の住宅用消火器はおおむね5年です。

ちなみに業務用消火器は一度使用しても再び詰め替えて使用できますが(一部消火器は除く)、住宅用消火器は再充てんができないため、使用後は新規で購入しなければなりません。

消火器の種類

消火器は消火薬剤によってさまざまな種類に分けられます。

火災にも種類があり、普通火災(A火災)、油火災(B火災)、電気火災(C火災)があります。それぞれの火災に適した消火薬剤と適さない消火薬剤があり、適切な消火器を使用して初期消火を行わなければいけません。

また、消火器は消火原理「冷却作用」「窒息作用」「抑制作用」の応用で消火します。

それでは消火器の種類を見ていきましょう。

粉末消火器

粉状の消火薬剤を噴射し、熱によって飴上に溶けた薬剤が炎を覆うことで火災を抑制し消火します。現在流通している消火器の90%以上がこの粉末消火器です。

中でも薬剤主成分がリン酸アンモニウムのものは粉末ABC消火器と呼ばれ、多様な火災に対応する優れた消火器です。

水消火器

文字通り消火薬剤は水。火災を冷却して消火します。霧状に噴霧する場合は電気火災でも使用できます。

強化液消火器

消火薬剤のベースである界面活性剤に添加剤を加えて消火能力を上げた水系の消火器。薬剤を霧状に噴霧できる消火器は全火災に適応します。昔は消火薬剤は炭酸カリウムの強アルカリ水溶液が主流でしたが、近年では中性のものほうが多数を占めています。

泡消火器

泡消火器には薬剤を混ぜ合わせた化学反応を利用して泡を放射する「化学泡消火器」と、消火薬剤を発泡ノズルを通過させることにより泡を放射する「機械泡消火器」の2種類があります。

特に油火災には非常に威力を発揮するので危険物施設によく用いられるが、泡は伝導性があるので感電の恐れがある電気火災には使用できません。

二酸化炭素消火器

二酸化炭素の窒息効果により消火を行う消火器ですが、密室や地下室などで使用すると人間も窒息してしまうので使用厳禁。

二次災害が少ないのでサーバールームや電気室、美術館などで良く使われ、油火災と電気火災にのみ対応しています。消火器本体が緑色をしているので消火器の中ではぱっと見でわかる消火器でもあります。

ハロゲン化物消火器

ハロゲン化物と呼ばれる物質を消火薬剤に使用して、主に抑制効果により消火する。主に消火薬剤として使用されるのはハロン1301というもので、消火能力は二酸化炭素よりも強力。(※オゾン層を破壊するので現在ではハロゲン化物消火器は製造されていません)

以下は消火薬剤と適応火災、消火作用の対応表です。

適応火災消火作用
 A火災  B火災  C火災 冷却 窒息  抑制 
粉末(ABC)
○(霧状)
強化液○(霧状)○(霧状)
化学泡
機械泡
二酸化炭素
ハロン1301
消火薬剤と適応火災、消火作用の対応表

消火器の点検

消火器の点検

消火器のような消防用設備等を設置した建物の関係者は、消防法第17条3の3によって消防用設備等の定期的な点検と、その結果を消防長または消防署長に報告することが義務づけられています。

点検は誰が行うのか

消火器は防火対象物の規模によって、有資格者による点検が必要となります。

  • 特定防火対象物で延べ面積が1,000㎡もしくは特定一階段等防火対象物”
  •  非特定防火対象物で延べ面積が1,000㎡のうち消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの

これ以外の防火対象物では、建物の関係者が自ら点検を行う必要があります。

ただし一般家庭用の住宅用消火器は点検の義務がありません。

半年に一度の点検が必要

消火器は6カ月ごとに点検しなければいけません

点検結果は、飲食店などの特定用途では1年に1回、共同住宅などの非特定用途では3年に1回報告する必要があります。

点検する内容

まずは消火器の外観に異常がないか、目視によって確認していきます。

  • 設置場所
  • 容器に変形や腐食
  • 消火薬剤の漏れ
  • 安全栓の脱落、封
  • 使用済み表示装置の脱落
  • レバーの変形

また、消火器の付属部分に異常がないか確認します。

  • キャップのゆるみ
  • ホースのヒビ
  • ホース内の消火薬剤の詰まり
  • ノズル等の部品の破損
  • 指示圧力計の範囲が緑色を指しているか

これらの外観点検は、いざという時の誤作動や不作動を防ぐために重要な点検です。

製造年から5年を越えた消火器については、外部の点検のほかに消火薬剤や消火器内部の点検も行わなければいけません

内部点検は有資格者でないと行えません。

機能および内部の点検については以下の記事で解説しています。

点検を怠ると…

平成21年9月に老朽化した消火器による破裂事故が発生し、負傷者がでました。

加圧式消火器はその作動原理によって、使用時に容器内の圧力が一気に高まる性質があります。消火器の容器に凹みがあったり、損傷があったりすると、高まった圧力によって破裂してしまうおそれがあるんです!

特に消火器容器底部の溶接部の腐食による消火器の破裂事故が発生しています。

蓄圧式消火器は使用時に圧力の急激な上昇はないので、加圧式よりも破裂事故のリスクは低い。そのため、自治体から蓄圧式の消火器が推奨されているところもあります。

このような事故は、消火器の定期的な点検で防げたかもしれません。消火器がいざというときに力を発揮するために、保守点検は適切に行われる必要があります。

また、老朽化した消火器はすみやかに処分しましょう。各消火器メーカーや社団法人日本消火器工業会などが中心となり、廃棄する消火器の回収・リサイクルを行い、廃消火器による破裂事故の防止・消火器の適正処理を推進しています。

消火器の点検ができる資格とは

消火器の点検について、一定規模以上の防火対象物では「有資格者」による点検が必要と説明しました。

ここでいう「資格」は、消火器の点検に必要な高度な技術と知識を持つ、次のような国家資格が当てはまります。

①消防設備士乙種6類

消防用設備の点検や工事ができる資格に「消防設備士」というものがあります。

消防設備士は、さまざまな消防用設備によって種類が異なり、また工事ができるかできないかという業務内容の違いによっても乙種と甲種で分けられます。

なかでも消火器の点検を行えるのは「消防設備士乙種6類」(通称乙6)。消火器は誰でも簡単に購入、設置ができるため、甲種は存在しません。

乙種6類は令和2年度の試験では約26,000人もの人が受験しています。乙6の受験者数は乙種甲種含め全種の中で最も多く、とても人気が高い資格です。

消防設備士乙種6類は試験に合格すると取得できます。合格率は例年40%前後で、国家資格としてはとても高い合格率です。

受験資格がないため、誰でも受験できるのが一番のポイント。消防設備点検に興味がある方にぜひはじめに取得してほしい資格です。

②消防設備点検資格者1種

消防設備士のほかに、消防用設備の点検ができる「消防設備点検資格者」という資格があります。

消防設備点検資格者は1種、2種、特種という3つの種類があり、そのうち消火器の点検ができるのは「消防設備点検資格者1種」です。

消防設備点検資格者はひとつで複数の消防用設備の点検を行える資格です。3日間の講習を受けることで資格を取得できますが、受講資格が必要です。

まとめ

本記事では消火器の使い方や点検の必要性についてご説明しました。

もし火災が発生した際に消火器の使い方を知っておくことは自分や身の回りの人の命を救うことにつながります。

消防用設備である消火器はいざという時に私たちの命を守るために、定期的な点検が義務化されています。それゆえ、消防設備点検の仕事は今後なくなることがない仕事です。また、消防用設備は全国どこにでも設置してあるので、どこに行っても消防設備点検の仕事は存在します。

もし消防設備点検の仕事に興味を持った方は、まずは消防設備士もしくは消防設備点検資格者の資格を取得してみてはいかがでしょうか。

▼消火器の点検ができる資格「消防設備士乙種6類」についての記事はこちら▼

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