皆さんこんにちは。
今回の記事では自動火災報知設備(以下、自火報)が必要な設置対象物の解説及び、警戒区域の設定の解説になります。
自火報が必要な設置対象物
自火報を設置しなければならない対象物は、危険物を貯蔵・取り扱う製造所等の施設(消防法第10条第4項)と、一定規模以上の政令別表第一に掲げる防火対象物(消防法第17条第1項・第2項)に分けることができます。
危険物施設への自火報の設置対象物等の概要
(1)指定数量の倍数が10倍以上の製造所等(移動タンク貯蔵所を除く)で総務省令で定めるものは、総務省令で定めるところにより、火災が発生した場合自動的に作動する火災報知設備その他の警報設備を設置しなくてはならないとされています。
上記の警報設備は以下のように区分されています。
- 自動火災報知設備
- 消防機関へ報知できる電話
- 非常ベル装置
- 拡声装置
- 警鐘
(2)以下の製造所等には自動火災報知設備を設けなければなりません。
※自動信号装置を備えた第2種(スプリンクラー設備)、第3種(水蒸気・水噴霧・泡・CO2・ハロ ン・粉末消火設備)の消火設備は自動火災報知設備とみなすことができます。
①製造所、一般取扱所
- 高引火点危険物のみを100℃未満の温度で取り扱うものにあっては、延べ面積が500㎡以上のもの。
- その他のものにあっては、指定数量が100倍以上で屋内にあるもの。
- 延べ面積が500㎡以上のもの。
- 一般取扱所の用に供する部分以外の部分を有する建築物に設ける一般取扱所(耐火構造の床・壁で区画されているものを除く)
②屋内貯蔵所
- 指定数量が100倍以上のもの(高引火点危険物のみを貯蔵・取扱うものを除く)
- 貯蔵倉庫で延べ面積が150㎡を超えるもの(150㎡以内ごとに不燃材料で造られた開口部のない隔壁で完全に区分されているもの、又は第2類・第4類の危険物[引火性固体及び引火性が70℃未満の第4類の危険物を除く]のみを貯蔵・取扱うものにあっては、貯蔵倉庫の延べ面積500㎡以上のものに限る。)
- 軒高が6m以上の平屋建のもの。
- 危政令第10条第3項の屋内貯蔵所(建築物の屋内貯蔵所の用に供する部分以外の部分と開口部のない耐火構造の床・壁で区画されているもの及び第2類・第4類の危険物(引火性固体及び引火性が70℃未満の第4類の危険物を除く)のみを貯蔵・取扱うものを除く。)
③岩盤タンクに係る屋外タンク貯蔵所
④タンク専用室を平屋建以外の建築物に設ける屋内タンク貯蔵所で引火性が40℃以上70℃未満のもの(当該建築物のタンク専用室以外の部分と開口部のない床・壁で区画されているものを除く)
⑤給油取扱所のうち、危政令第17条第2項第9号ただし書に該当する屋内給油取扱所又は上部に上階を有する屋内給油取扱所。
(3)、上記(2)以外の製造所等で、指定数量の10倍以上の危険物を貯蔵・取扱うものは、次のいずれかを設けなければなりません。
- 消防機関へ報知できる電話。
- 非常ベル装置
- 拡声装置
- 警鐘
令別表第一に掲げる防火対象物への自火報設置の概要
令別表第一に掲げる防火対象物又はその部分に対する設置基準は、上記の表に示す通り一定規模以上の場合に設置が必要になります。
ご覧の通り、自動火災報知設備の設置基準となる延べ面積は防火対象物の用途によって異なります。また、その部分の階数などによっても細かく設置基準が分かれています。
表中に記載のある令第34条の解説と特定一階段防火対象物の解説はこの記事の最下部にあります。
自火報を省略できない場所
先ほどはスプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備(いずれも標示温度75℃以下で作動時間60秒以内の閉鎖型スプリンクラーヘッドを設けたものに限る。)は自動火災報知設備とみなすことができると記載しました。
しかし例外があります。以下に掲げる防火対象物又はスプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備が設けられた有効範囲内であっても、自火報(感知器の設置等)を省略することができません。
- 特定防火対象物又はその部分。
- 1.以外の防火対象物の地階・無窓階・11階以上の部分。
- 階段・傾斜路・エレベーター昇降路・パイプダクトなど。
- 廊下・通路(令別表第1の1項〜6項まで、9項、12項、15項、16項イ、16項2、16項3に掛かる防火対象物の部分に限る。)
- 感知器を設置する区域の天井等の高さが20m以上の部分。
- 遊興の為の設備又は物品を客に利用させる役務の用に供する個室(これに類する施設(カラオケBOXやネットカフェなどの部分)を含む。)。
- 感知器を設置する区域の天井等の高さが15m以上20m未満の場所。
警戒区域
警戒区域とは、火災の発生した区域を他の区域と区別して識別することができる最小単位の区域をいい、下記のような原則と例外がある。
原則1 防火対象物の2の階にわたってはいけない。(天井裏や小屋裏は階に算定しない。)
原則1の例外
(1)2の階にわたって警戒区域の面積が500㎡以下の場合。
(2)煙感知器を階段、傾斜路、パイプシャフト、パイプダクトなど、その他これらに類するものに設置する場合。
原則2 一つの警戒区域の面積は600㎡以下とし、その一辺の長さは50m以下(光電式分離型感知器を設置する場合には100m以下)とする。
原則2の例外
(1)防火対象物の主要な出入口からその内部を見通すことができる場合にあっては、その面積が1000㎡以下の場合。
(令第21条第2項第2号のただし書きに規定する「主要な出入口からその内部を見通すことができる場合」とは、直接屋外又は廊下に面した通常使用される出入口から、内部を容易に見通すことができる場合で、例として学校の体育館のフロアー部分、屋内競技場、集会場、劇場の客席部分などが該当する。なお、間仕切り壁などがない場合であっても、棚や物品の積み上げ、大型機械の設置などにより内部を見通すことができない場合は、ただし書きに適用しないものとする。)
円形、多角形及び楕円形建築物の場合の警戒区域
- (1)のように円形の内側又は外側に存在する場合、円状の通路の外半周を一辺とする。(1)の桃色が円通路で↔が一辺である。
- (2)のように壁などで区画されていない場合は↔が一辺である。
- (3)のように壁などで区画されていない場合は↔が一辺である。
- 多角形の場合は最長の対角線を一辺とする。
警戒区域の設定例
警戒区域の最小所要設定数は、おおむね下図のとおりとする。ただし、令第8条(令8区画)や令第21条第2項第2号のただし書きの適用を受けない場合とする。
階段、傾斜路などにおける警戒区域の設定
- 階段、傾斜路、エレベーター昇降路、パイプダクトなどは、平面的な警戒区域とは異なり、縦方向となるので、居室・廊下などとは別の警戒区域。に設定する。
- 高層建築物などで階数が多い場合には、垂直距離が45m以下ごとに別の警戒区域に設定する。また、地階が2階以上の場合は、地上階とは別の警戒区域とする。(下図参照)
- 階数が2以下の場合に、階段部分の警戒区域は2階の居室などと600㎡以下の範囲内で同一警戒区域とすることができる。(下図、図A参照)
- 水平距離で50m以下の範囲内に別の階段、エレベーター昇降路などが設けられている場合には、これらを同一の警戒区域として設定することができる。ただし、ダクトなどの感知器の設置階が地階の場合は地上階とは別の警戒区域に設定する。(下図参照)
※階数とは
建基令第2条で「昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分または地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の1/8以下のものは当該建築物の階数には算入しない。」と定められている。
※地階とは
建基令第1条で「地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの1/3以上のものをいう。」と定められている。(上図、図B「建基令第1条の地階の定義」参照)
警戒区域の範囲
警戒区域の面積の算出方法
感知器の設置が免除されている場所も含めて警戒区域の面積を算出します。
例えば便所、洗面所などは感知器を設置する必要はありませんが、警戒区域の面積には含め、この時の算出基準は壁などの中心線を境界線として算出します。(市町村の火災予防条例などにより設置が必要な場合があります)
ただし、開放された階段部分及び別に警戒区域を設定する階段、傾斜路、エレベーター昇降路、パイプダクトなどの部分は面積算出から除外できます。
また、開放された廊下やベランダなどの部分が床面積に算入されない場合は、警戒区域の面積に含める必要はありません。
警戒区域の境界
警戒区域の境界は、廊下、通路、壁、防火区画などとします。
境界線はあまり複雑にならないようにし、倉庫、工場その他間仕切りのない場合を除いては部屋の中央を境界線にすることは避け、関連する部屋(例えば配膳室や厨房など)は同一警戒とします。
警戒区域の番号の設定方法
設定した警戒区域には、警戒区域線と番号を付けていきますが、原則として番号は下階から上階へ、また、受信機に近い場所から遠い場所の順として、階段やエレベーター昇降路などは一般階の後に設定します。
令第34条の改正法令とは
通常消防法令改正が行われたとしても関係者の経済的負担を考慮し、設備は既存のままで問題ありませんが(既存不遡及の原則)、ある一定の用途の防火対象物ではこの既存不遡及を適用しないことになっています(既存遡及する)。
また、建物の増築・改築を行う部分の床面積が1000㎡以上、又は、建物の延べ面積の1/2以上になる増築・改築、主要構造部である壁について行う過半の修繕又は模様替えを行う場合に、既存遡及(きぞんそきゅう)を行う必要があります。
これは関係者の経済的負担よりも利用者などの安全性を優先したもので、特に特定防火対象物でこの既存遡及が用いられます。これらが令第34条の部分になります。
特定一階段防火対象物とは
- 防火対象物の屋内に避難に使用する階段が1つしかないもの
- かつ、地階若しくは3階以上の階に特定用途部分(遊技場やホテルなど)がある
上記の条件がそろうと「特定一階段防火対象物」となってしまいます。
これは2001年9月に発生した新宿秋葉原の雑居ビル火災の後の消防法改正で生まれた用語になり、秋葉原雑居ビル火災がまさにこの様な建物で、3階と4階が特定用途部分になり避難に使用する階段が屋内に1つしかなく、火災時にこの屋内階段が避難に使用できずに避難が遅れて多数の死傷者が出てしまったのです。
その為にこの様な建物を特定一階段防火対象物として規制し、同時に防火管理の徹底を行う為の防火対象物定期点検報告制度というものも創設され、その他にも消防機関による立入検査の時間制限撤廃や、罰則強化などの改正も同時に行われました。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
今回の記事は自火報の設置基準の解説になりますが、自火報が必要な建物は、特定防火対象物は300㎡(病院と福祉施設、蒸気浴場、文化財、カラオケBOX、ホテルを除く)、非特定防火対象物は500㎡ or 1000㎡と覚え、警戒区域も、600㎡以下で50m以下、たて穴区画(階段やエレベーター)は別警戒区域、警戒区域番号は下の階から、若しくは受信機に近い方から、になります。
文中でもお話しましたが、消防法では便所などに感知器を設置しなくても良いですが、暖房便座を設置したり、コンセントや暖房器具を設置した場合に火災予防条例などにより設置が必要になるケースがありますので注意してください。
この記事の他にも自動火災報知設備に関する記事があるので、ぜひご覧ください。
▼自動火災報知設備の受信機・感知機の設置場所や選定方法についてはこちら▼
▼感知機の個数算定、熱感知機の設置基準についてはこちら▼
▼煙感知器・炎感知機の設置基準についてはこちら▼
▼自動火災報知設備における付属機器の設置基準についてはこちら▼