「消防設備点検資格者」とは消防用設備の点検ができる資格です。
そもそも消火器や自動火災報知設備などの消防用設備は、消防法によって年2回の点検が定められており、万が一のときに消防用設備が正常に作動するかを確認します。この法定点検は国家資格である「消防設備士」と「消防設備点検資格者」が行わなければいけません。
さて、本記事ではこのうち「消防設備点検資格者」について解説します。
あなたは「消防設備士」との違いを理解していますか?
この2つの違いをきちんと理解し、あなたが消防設備点検の仕事をする上で真に役立つ資格を取得しましょう!
消防設備点検資格者ができること
消防設備点検資格者とは、名の通り消防用設備の点検を行える資格です。
消防設備点検の資格として「消防設備士」がありますが、消防設備点検資格者の資格を取得すれば消防設備士の複数の区分の点検資格をまかなうことが可能です。
※但し、消防用設備の工事ができるのは消防設備士甲種を保有する者のみです。
消防設備点検資格者には1種、2種、特種という3種類の資格があり、それぞれ扱える消防用設備が異なります。点検できる消防用設備は以下の通りです。
消防設備士との違い
2つの資格制度が発足した経緯
もともと消防用設備の維持管理は、市町村が行っていました。しかし、当時は消防用設備の設置や整備が不適切に行われていたため、昭和40年に消防法が改正されました。このときに「消防設備士」という資格制度が発足しました。
当時の消防設備士は工事と整備ができる甲種と整備のみができる乙種があり、そもそも点検自体が確立されていませんでした。しかし昭和40年代後半の火災の多発によって、昭和49年に消防用設備の定期点検が義務づけられました。
昭和49年の法改正で、消防用設備の定期点検・報告制度が発足したことに合わせ、点検のみを行う資格として「消防設備点検資格者」が創設されました。
当時、消防設備士も点検は行えましたが、消防設備士の数が建物の数に対して少なすぎました。短期間で点検に特化した人材を増やすために、点検資格者の制度が生まれたのです。
できる業務が異なる
消防設備点検資格者は消防設備士が扱う消防用設備を点検できるなら、消防設備士の資格はいらないのでは?と思った方もいるでしょう。
しかし、消防設備士と消防設備点検資格者には決定的な違いがあります。それは「整備・工事ができるか」という点です。
消防設備士に対し、一つ持っているだけで様々な消防用設備を扱える消防設備点検資格者ですが、できる業務は「点検のみ」です。
一方で、消防設備士には乙種と甲種があり、乙種は「点検・整備」、甲種は「点検・整備・工事」を行えます。
ちなみに「工事」と「整備」の区別は以下のように定義されています。
新設、増設又は移設は、原則として「工事」に該当する。 改修は、新たに設計を要するものについては「工事」に該当し、その他の改修は原則と して「整備」に該当する。
日本消防設備安全センター「消防設備士義務講習用テキスト」
例えば、消防設備点検資格者2種を持つ人が自動火災報知設備の点検で改修が必要だと判断しても、工事(又は整備)は消防設備士4類を持つ人に依頼しなければいけません。
どちらを取得すべきか
消防用設備にまつわる2つの資格はできる業務内容が異なるということがわかりました。それではどちらを取得すればいいのでしょうか?
もしあなたが消防設備点検を行う会社で働く際に資格を取得しようとしているのなら、その会社の業務内容を調べてみてください。
もし点検のみを行う会社なら、消防設備点検資格者はうってつけの資格です。点検する消防用設備に合わせて、都度消防設備士乙種を何種類も取る必要はありません。消防設備点検資格者1種2種を取得してしまえば、ほぼすべての消防用設備の点検を行えます。
しかし工事の業務を主に行っている会社であれば、消防設備点検資格者だけだと点検の業務しか行えないため活躍の場が制限されてしまいます。消防設備士乙種6類、甲種4類、甲種1類などを選んで取得したほうが効率的と言えるでしょう。
次の章では消防設備点検資格者を取得するまでの道のりについて説明します。
資格を取得するには
消防設備点検資格者は1つの資格で複数種類の消防用設備を点検でき、非常にコスパのいい資格のように思えます。
消防設備点検資格者は、点検資格者講習を受けることで資格を取得できます。
しかし、消防設備点検資格者講習は誰でも参加できるわけではありません。
受講資格
消防設備点検資格者の講習を受けるには、受講資格が必要です。
消防設備士や電気工事士、建築士などの国家資格を持っていれば受講できます。また、特定の学歴や実務経験も受講資格になります。受講資格の詳細はこちらからご確認ください。
以下の表は代表的な受講資格を抜粋しています。
代表的な受講資格 | 必要な書類 |
甲種または乙種消防設備士 | 免状のコピー |
第1種または第2種電気工事士 | 免状のコピー |
1級または2級管工事施工管理技師 | 免状のコピー |
1級または2級建築士 | 免状のコピー |
消防用設備等または特殊消防用設備等の工事または整備について5年以上の実務経験を有する者 | 実務経験の証明勤務先、在職期間を確認できる被保険者記録照会回答票の写し 等 |
学校教育法による大学もしくは高等専門学校、旧大学令による大学又は旧専門学校令による専門学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科又は課程を修めて卒業した後、消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事又は整備について1年以上の実務の経験を有する者 | 学校の卒業証明書実務経験の証明勤務先、在職期間を確認できる被保険者記録照会回答票の写し 等 |
学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校又は旧中等学校令による中等学校において、機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科を修めて卒業した後、消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事又は整備について2年以上の実務の経験を有する者 | 学校の卒業証明書実務経験の証明勤務先、在職期間を確認できる被保険者記録照会回答票の写し 等 |
受講資格がなくて困っている方におすすめしたいのが、消火器の点検の資格である消防設備士乙種6類。受験資格が必要ないため、どんな方でも受験できます。合格率は約40%もあり、消防設備点検に携わる方はまずこの資格を取る人が多数。興味がある方はぜひこちらの記事をチェックしてください!
講習内容
講習は1種、2種、特種で分けられ、取得したい資格の種類に応じて講習を受ける必要があります。それぞれの資格で扱う消防用設備の知識がないと、資格者として責任をもって点検を行えませんからね。
講習はそれぞれ3日間にかけて開催されます。
講習の内容は、消防法規や建築法規などの法律関係、扱う各消防用設備の設置基準や点検要領などをテキストをもとに学んでいきます。
最終日の最後の2時間で『修了考査』と呼ばれる、いわば最終試験が実施されます。
修了考査ではおもに「消防法令関係」「技術基準関係」「点検要領関係」の3つの科目で試験が実施されます。この3つの科目ごとに50%以上の正答率、かつ全体の70%以上の正答率があれば、晴れて合格です!
3日間の講習の内訳は以下から確認できます。
修了考査はほとんどの人が合格できる
試験というと合格できるか不安になる方もいますよね。しかし消防設備点検資格者の修了考査は、実は合格率が90%以上!
以下の表は2019年度の消防設備点検資格者講習の実施状況です。
2022年度 | 1種 | 2種 | 特種 |
受講者数 | 3,424人 | 2,949人 | 21人 |
合格者数 | 3,299人 | 2,886人 | 21人 |
合格率 | 96.3% | 97.9% | 100.0% |
なぜこんなにも合格率が高いかというと、実は講習中に考査で出る範囲を教えてくれるんです。
さらに、修了考査中はテキスト持ち込みがOK!講師が教えてくれるポイントをマーカーや付箋等で印しておけば、考査に役立ちますよ。
しっかり講習を受けていれば、ほとんどの人が難なく合格できるというわけです。これだけ高い合格率を見ると、3日間講習を受けるのも苦ではないですよね!
受講までの流れ
講習の内容がわかったらやる気が出てきましたよね。申請方法を確認して、さっそく受講に向けた準備を始めましょう。
講習日程を確認しましょう
消防設備点検資格者の講習は日本各地で受講できますが、全都道府県で開催されるわけではないので注意が必要です。
講習の日程はこちらから確認が可能です。
東京では年に4回実施されますが、その他の地域では年に1回しか開催されない場所が多いので、タイミングを逃さないように!
受講申請方法
講習を受けるには申請が必要です。事前に以下の書類を用意して、実施予定表に記載してある申請場所へ提出しましょう。提出先は会場ごとに異なります。
- 受講申請書(1種、2種、特種の申請書はこちらからダウンロードできます)
- 受講資格を証明する書類
- 免状写真票、整理票、受講票、テキスト引き換え票(受講申請書とともにダウンロードできます)
- 返信用封筒(結果通知用)
- 写真2枚(申請書貼付用)
申請方法の詳細は、日本消防設備安全センターが公開している受講の手引きを確認してください。
定員が埋まってしまうと受付が終了してしまいます。東京都や神奈川県は応募者が殺到するため、はやめに申請をするように!
科目免除はおすすめしません
実は希望者は講習の科目免除を行えるのですが、おすすめはしません。
なぜかというと、講習の科目は免除されても、修了考査自体は免除されないからです。免除資格を持っていても、講習の内容が完璧にわかるとは限りません。免除される科目は法規の部分が多く、法改正もしっかり把握している必要があります。科目免除を受けて考査に落ちてしまったら元も子もないですよね。
それでも科目免除を受けたいという方は、受講申請書と一緒に科目免除申請書も提出してください。免除を受ける資格があるか、どの科目が免除されるか、なども申請書から確認ができます。
合格すれば晴れて点検資格者に!
無事講習を終え、修了考査も合格したからさっそく消防設備点検のお仕事に…というわけにはいきません。点検業務を行うには、免状を交付してもらわないと消防法違反になってしまいます。
免状の交付申請方法
免状の交付申請については、郵送されてくる修了考査の結果通知書に記載されています。
日本消防設備安全センターに申請を行い、早ければ合格通知から20日後に発送されます。通知書に記載してある期限内に申請しなかった場合は発送が遅れますが、申請さえすれば免状は交付されるので安心してください。
免状交付後の手続きについて
免状をなくしてしまったり、記載事項に変更がある場合は速やかに手続きを行ってください。
免状をなくした、破損した、汚れて記載事項が見えない…という場合
再交付の手続きを行ってください。
再交付の申請書はダウンロードできないので、返信用の定形封筒とともに安全センターに申請書を請求しましょう。
免状に記載された本籍や氏名に変更があった場合
書換えの手続きを行ってください。
書換えの申請書もダウンロードできないので、安全センターに申請書を請求する必要があります。
住所または勤務先に変更があった場合
住所等異動届をダウンロードし、安全センターに届け出ましょう。
5年ごとに再講習が必須
消防用設備というのは年々変化していくもので、時代に合わせて消防法も改正されていきます。そのため、資格を有する者は新しい報や設備に対応して、知識のアップデートが必要です。
消防設備点検資格者は免状の交付から5年ごとに再講習を受ける必要があります。この再講習を怠った場合、資格は喪失してしまいます。
せっかく取得した資格を、たった1回の講習を受けなかっただけで無駄にするのはもったいない。点検資格者の再講習についてはこちらで詳しく解説しています。これを読んで、資格者としての義務をしっかり遂行しましょう。
まとめ
本記事では消防設備点検資格者について解説しました。
ひとつの資格で複数の消防用設備の点検ができるうえに、3日間の講習でほぼ確実に取得できます。
今後消防設備点検に興味があるという方にはぜひ挑戦していただきたい資格です。
消防設備点検資格者を取得したら、さっそく『ビルメ』で働きましょう!ビルメでは消防設備点検の仕事を単発で探せます。消防設備点検資格者を持っていれば選べる仕事の幅が広がります。資格があれば経験がなくても参加できる仕事も!
ビルメについて気になった方はぜひ以下の記事をご覧ください。ビルメの魅力や使うメリットを徹底解説しています。
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