消防設備点検や消防設備工事をする際に必ず必要な国家資格「消防設備士」。実は細かく数種類に分類分けされており、扱える消防用設備もそれぞれ異なります。
消防設備士っていうひとつに資格があるわけじゃないんだ!一体どんな種類に分けられるんだ?
そこでこの記事では、「消防設備士」の種類を全てご紹介。それぞれの種類で扱える消防用設備や試験の合格率、難易度をお伝えします。消防設備士になりたい方や受験予定の方、興味がある方はぜひ最後まで読んでくださいね。
消防設備士は大きく分けて2つ!
細かい種類をお伝えする前にまずご説明したいのが「甲種」と「乙種」について。消防設備士について調べている方は聞いたことがあるかもしれませんが、今一度おさらいしてみましょう。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
甲種|点検・整備・工事ができる資格
消防設備士の業務は、消防用設備の点検・整備・工事ですが、その全てを制限なく行うために必要な資格が「消防設備士」甲種の資格です。後述する乙種との大きな違いは、消防設備工事が行えるか否か。甲種を保有していれば、乙種でできることに加え工事が行えるため、「消防設備士」の上位資格とも言えます。
消防設備工事を主な業務にしようとお考えの方、そのような会社に入社をお考えの方は取得しなければなりません。試験においては、電気配線に関することや、消防用設備の仕組みなど、複雑で難しいことが問われるため、合格率は35.2%程度に留まります。合格するには勉強に力を入れなくてはいけないことがポイントです。
また、受験に際しては以下のような受験資格が定められており、クリアしていなければ受験できません。
- 特定の国家資格を保有する者(下記は代表例)
- 消防設備士甲種
- 電気工事士
- 建築士
- 学歴によるもの
- 学校教育法による大学、高等専門学校(5年制)、高等学校又は中等教育学校において機械、電気、工業 化学、土木又は建築に関する学科又は過程を修めている者(引用:一般財団法人消防試験研究センター)
- 実務経験
- 消防設備乙種の免状の交付を受けた後、2年以上の実務経験を持つもの
乙種|点検・整備ができる資格
「工事をする予定がないし、会社としても点検・整備の力を入れている」という方は、「消防設備士」乙種で事足りるでしょう。工事は行えませんが、その分試験における出題範囲が狭まります。乙種全体の合格率は42.2%と、甲種に比べ取得が容易とされています。
乙種は受験資格が定められていないため、出願すれば誰でも受験できることがポイント。取得すれば、消防設備点検資格者と呼ばれる別資格を受講する際の条件を満たせるため、消防設備士を目指す方が最初に取得すべき資格とも言えます。消防設備点検資格者については、以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひご確認ください。
ちなみに乙種を取得し、2年以上の実務経験を積むことで、甲種を受験できます。
更に細かく8つの類に分類できる
さて、「消防設備士」は大きく甲種と乙種に分けられるとご説明しましたが、これだけではありません。更に細かく8つの「類」に分けられます。以下の表の通り、類ごとに扱える消防用設備が異なり、点検・工事する設備によって異なる資格を取得する必要があります。
ここからはそれぞれの類を個別にご紹介します。主に以下2つをお伝えしますので、ぜひ確認してみてください。
- その類で扱える消防用設備
- その類の合格率と難易度
データは一般財団法人 消防試験研究センターが公表している、令和2年度の受験者数と合格者数、合格率を参照しています。難易度は合格率から算出し、☆で評価しています。☆の数が多くなるほど、取得が難しいと捉えてください。
それでは、1類から見ていきましょう。
消防設備士|1類
1類は水系の消防用設備を扱える資格です。水を用いて消火する設備、例えばスプリンクラー設備など、大きめの商業施設に備わっている設備を扱えます。
1類で扱える消防用設備
- 屋内消火栓設備
- スプリンクラー設備
- 水噴霧消火設備
- 屋外消火栓設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
- 共同住宅用スプリンクラー設備
1類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 9,949 | 1,917 |
合格者数 | 3,104 | 647 |
合格率 | 31.2% | 33.8% |
難易度 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
甲種において、受験者数の多さでは2番目を誇る1類。合格率は「消防設備士」の中では低く、甲種で31.2%、乙種で33.8%に留まります。年によって合格率が変動することも多く、合格率が20%台の年もあります。「消防設備士」の中では難しいとされています。
消防設備士|2類
1類と同じく水系の消防用設備である、泡で消火するタイプの消防用設備を扱えます。水での消火に適していない、駐車場やヘリポートなどで活躍します。
2類で扱える消防用設備
- 泡消火設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
2類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 2,895 | 517 |
合格者数 | 960 | 194 |
合格率 | 33.2% | 37.5% |
難易度 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
1類に比べ受験者数は約3割程度に留まります。「消防設備士」の中でもマイナーな部類で、試験勉強に関する「先輩の声」も少なく、勉強には根気が必要かもしれません。そのことを考慮すると、難易度は高めかもしれません。
消防設備士|3類
ここ最近、消防設備点検の際に死亡事故の事例が多いガス消火設備を扱えるのが3類です。
3類で扱える消防用設備
- 不活性ガス消火設備
- ハロゲン化物消火設備
- 粉末消火設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
3類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 2,893 | 707 |
合格者数 | 1,150 | 241 |
合格率 | 39.8% | 34.1% |
難易度 | ☆☆☆ | ☆☆☆ |
受験者数はそこまで多くありませんが、甲種の合格率は40%に近く、勉強をして試験に臨めば合格は難しくないはずです。上記の通り、死亡事故が起こりかねない消防用設備であるため、気を引きしめて勉強する必要があります。
消防設備士|4類
これまでの1類〜3類とは違い、日常で目にする機会も多い消防用設備である「火災報知器」を扱えるのが4類です。マンションにお住まいの方は天井についているセンサーを見たことがあるはず。それこそ火災報知器です。
4類で扱える消防用設備
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 消火機関へ通報する火災報知設備
- 共同住宅用自動火災報知設備
- 住戸用自動火災報知設備
- 特定小規模施設用自動火災報知設備
- 複合型居住施設用自動火災報知設備
4類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 16,554 | 8,492 |
合格者数 | 6,159 | 3,007 |
合格率 | 37.2% | 35.4% |
難易度 | ☆☆☆ | ☆☆☆ |
4類は甲種において最も受験者数が多い類で、1年間の受験者数が唯一10,000人を超えています。一般的に普及している消防用設備である火災報知器が扱えるようになるため、需要が高いのです。
合格率は甲種・乙種で35%〜37%と、とりわけ低いわけではありませんが、覚えることが多く、試験勉強には苦労したという声もよく聞きます。
4類の勉強の際に役立つ動画をYouTubeにアップしているので、ぜひチェックしてみてください。
甲種4類に関しては、別の記事で詳しくご紹介しています。
消防設備士|5類
避難はしごなど、高所から地上に避難する際に活躍する消防用設備を扱えるのが5類です。2階以上にお住まいの方なら、お部屋のベランダで見かけたこともあるのではないでしょうか。
5類で扱える消防用設備
- 金属製避難はしご
- 救助袋
- 緩降機
5類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 2,888 | 882 |
合格者数 | 1,103 | 378 |
合格率 | 38.2% | 42.9% |
難易度 | ☆☆☆ | ☆☆ |
5類の受験者数は2類、3類と同様にそこまで多いとは言えません。しかし合格率は、甲種が38.2%と高く、乙種は42.9%あるため、他の類に比べると難易度は低めでしょうか。
消防設備士|6類
6類で扱うのは、日常生活で最も目にする機会が多い消防用設備である消火器です。1類〜5類とは異なり、甲種はなく乙種のみ存在します。消火器には工事という概念がないことが理由に挙げられます。
6類で扱える消防用設備
- 消火器
6類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | ー | 20,955 |
合格者数 | ー | 8,944 |
合格率 | ー | 42.7% |
難易度 | ー | ☆☆ |
乙種6類、いわゆる乙6は「消防設備士」の中で最も1年間の受験者数が多く、その数なんと20,000人オーバー。消火器という最も身近な消防用設備を扱うため需要が高い上に、試験範囲が比較的狭く、勉強しやすいことが理由として挙げられます。しっかりと勉強すれば短期間でも合格を掴めるため、難易度としては低めです。
消防設備士|7類
7類で扱える消防用設備は漏電火災報知器。6類と同じく、甲種はありません。と言うのも漏電火災報知器の工事には、別国家資格「電気工事士」の免許が必要なことが理由に挙げられます。点検は消防設備士、工事は電気工事士に分かれているのです。
7類で扱える消防用設備
- 漏電火災報知器
7類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | ー | 4,926 |
合格者数 | ー | 2,809 |
合格率 | ー | 57.0% |
難易度 | ー | ☆ |
合格率は驚異の57%!つまり2人に1人以上は合格できます。実は「消防設備士」には、保有する資格に応じて試験の一部が免除される仕組みが採用されているのですが、7類の場合、「消防設備士」の他の類と電気工事士の資格を持っていれば、なんと全35問中25問が免除されます。電気工事士と切り離せない関係にある7類は、電気工事士資格保有者の受験が多いため、合格率が群を抜いて高いのです。
消防設備士|特類
最後にご紹介するのは特類。特殊消防用設備を扱える資格です。特殊消防用設備とは、従来型ではない消防設備のこと。従来型が設置できない場合などに代替で設置されます。専門性・特殊性が高いため、点検・整備においても高い知見が必要であることから、甲種のみ存在します。
特類で扱える消防用設備
- 特殊消防用設備
特類の合格率と難易度
甲種 | 乙種 | |
受験者数 | 918 | ー |
合格者数 | 248 | ー |
合格率 | 27.0% | ー |
難易度 | ☆☆☆☆☆ | ー |
設置数が多くないため、需要は低く、受験者数、合格率共に甲種「消防設備士」の中でも最少の値です。特類の受験に際し、以下の図のような組み合わせで甲種を保有していなければならないことも理由として挙げられます。
特類の試験が難しいというより、特類を受験することが難しいため、難易度は高めです。
初めての取得なら乙6一択!
今回ご紹介した数ある「消防設備士」の中で、これから勉強を始める方に最もおすすめしたいのが乙種6類、いわゆる乙6です。消火器が設置されていない建物はないに等しいため、圧倒的な需要があります。更に試験範囲も他の類に比べると狭く、1ヶ月未満の勉強でも合格が狙えます。
消火器という身近さも、おすすめする理由のひとつ。他の類で扱える消防用設備は、日常生活で触れることはあまりないはず。例えば「漏電火災報知器」と聞いて、パッとその見た目が思い浮かびますか?
思い浮かばない……
手に触れたことのないものより、実際に見た・触れたことのあるものを勉強する方が、親しみが湧き、記憶にも残りやすいため、勉強も楽しくできるはずです。
乙6に関して少しでも興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事を読んでみてください。乙6に関して詳しく説明しています。
まとめ
さて、この記事では「消防設備士」の種類、合格率、難易度をメインにお伝えしました。前章でもご紹介した通り、「どの類から取ればいいのか分からない」という方はぜひ乙種6類の取得を検討してみてくださいね。
「消防設備士について全く知らなかったけど、ちょっと興味が湧いた」という方は、ビルメで消防設備士の仕事を体験してみませんか。作業着をお持ちでなくても問題ありません。お気軽にご登録くださいね。